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ホームレス支援ニュース№11

ホームレス支援ニュース№11        2009年6月30日
  社団法人広島県社会福祉士会ホームレス支援委員会(編集:岡崎仁史)
県民の皆様の寄付金である広島県共同募金会の配分を受けて発行しています。感謝。
(特集)  路上生活者の「脱路上」の支援システムの形成および人生を作る個別支援が重要
Ⅰ 「脱路上」の支援システムの形成: A夜回り・入浴サービスの開発→B相談援助〔①夜回り(入浴の予約、相談援助)、②入浴利用や相談会などでの詳細な相談援助、③反貧困の相談援助〕→C雇用・社会保障・社会福祉につなぐ〔社会保険の確認、就職への側面支援、生活保護の同行申請〕→D脱路上後の地域社会につなぐ〔生活支援、元路上生活者のサロン、ボランティア参加、いきがい形成〕という流れがある。
Ⅱ 個別支援は社会の側の支援があって多様性のある個人の主体力が作られていく。
「ニーズと支援」という社会福祉援助技術関係から、本人・支援者の相互関係の中で「語る、聴く、分かち合う」関係に移行すると、本人の自己決定、生活・人生を作る行為が行われるようです。
「路上脱却」その後。社会関係の中で人生を作る自己 
広島西支部・広島夜回り・入浴サービス: 鈴川千賀子
〔仕事がしたい: 基本は夜回りや入浴での相談援助〕 第2・4水曜の夜回りに参加する。担当コースのメンバーが今日は誰が来ているかのチェックし、食べ物や頼まれていた衣類等の手渡しを責任もってやってくれる。メンバーは、元路上生活者、学生、社会人がいる…皆、こころやさしき仲間たち。私は主として「相談援助」を担当。高齢や障害、病気の人等は生活保護申請をすすめ、もう何人もの方が畳の生活を手に入れた。他方、何度も会っているが、なかなか路上脱却の糸口が見出せない人もいる。でも根気よく話をする、世間話でもいい、「話を聞いてもらいたい」という気持ちがあることが、ひしひしと伝わってくる。しかし、2009年春くらいから、派遣切りで仕事と住まいをなくした人たちが一挙にふえてきた。一人ひとりとじっくり話をする時間がとれない。入浴サービスに誘うが、「友人のところで入っているから良いです」と断られる。緊急雇用対策、雇用促進住宅への入居などの支援施策が作られるが、いつもその安全網から漏れる人たちがいる。彼らの共通の願いは、とにかく「仕事がしたい」である。入浴サービスの利用者は、ゆっくり話ができるので、1ヶ月の心の変化を求めて話題を工夫している。
〔人間関係の形成=地域社会への所属、相談援助が重要: 生保の申請支援、就職支援〕  夜回り、入浴サービス、反貧困の相談会はそれぞれ特徴があるが、いずれの場合も、継続相談が大切。生活保護にしても、入居して終わり、ではない。要介護の高齢者であれば施策につなぐことができるが、若い方の場合は制度的サービスが少なくその後も訪問や交流を続け、心のつながりを持ち続けないと、再び住まいも仕事も失うことになりかねない。そんな中、広島市は路上脱却後の生活を支援する目的の相談員派遣制度を作った。現在、夜回りの会のボランティアが数名委嘱を受け、活動している。私が係わった方の所にも訪問していただいており、ありがたい。この制度は有効なので拡充していただきたい。
〔本人の主体性と公私の制度の活用〕  Aさんは、医者と合わないからと治療を中断し、体調が悪いままで求職活動をしても決まるはずが無く、更にケースワーカーとの面接を避けたため、保護費の支給が中断したことがあった。「もう役所に行く気になれない」と落ち込んでいたが、自分自身を取り戻すため、仕事につながる資格取得をすすめ、その費用と家賃1月分を社会福祉士会自立支援基金からお貸しした。そして就職の意欲があるので生活保護も再開され、病院も入浴サービススタッフの紹介で別の所に変わり、治療を継続している。
〔自分探しと地域社会への所属〕  Bさんは50歳代の男性。生活保護申請の意思がないが、冬を路上で乗り切る自信がないと言うので、「自立支援基金」を貸して、我々の知人のアパートに格安の家賃で入居させてもらった。その後数社の面接試験を受けたが、半年たっても仕事に就けない、健康状態も良くない、そして電気・水道も止められた。本人はようやく生活保護を申請する気になったが、もう一度実家に戻って家族と話をしてきたいと言い、その結果、暫くは実家の仕送りが得られることになった。家業は農家であり、兄弟が継いだため、彼の居場所が無くなったようである。彼は農業経験しかなく、運転免許もパソコンもできず、ましてや「他人」に雇われた経験もなく、求職活動を通して「自分探し」をしている。
〔あんたらに世話になったけえ、変なことはできんのよ:地域社会への所属〕 Cさんは「もう一生、この生活でいいんよ」と言っていたが、体を壊し緊急入院した。「退院後、元の路上生活には戻りたくない!」という意思が固く、生活保護を申請し居宅生活が認められた。その日暮らしで投げやりな傾向のある人だが、実際はとても几帳面で、ケースワーカーへもきちんと生活上の変化を報告している。「あんたらに世話になったけえ、変なことはできんのよ」と言う。
〔社会関係の中の個人: 地域社会への所属〕 元気そうに見えたが心臓が悪かったDさん、60歳代の男性。生活保護相談に同行したとき、身体障害者手帳を持っていたことが分かり、それら重要書類はみな、知人に盗まれていた。年金は調べたことでもらえることになった。定額給付金を始め、役所からの文書が届くと必ず私のところに持ってきて内容確認する。話する期間が暫くあくと機嫌が悪くなる。今までの印象に残っている景色を描きとめておきたいと言うので、スケッチブックをプレゼントした。室内に絵が一枚ずつ増えている。
〔「自分が必要」と思われる社会: 地域社会への所属〕
「昼間何もすることが無いから、酒を飲むようになる。それしかすることがない!」と、希薄な社会関係の中、生活保護で暮らすデメリットを語るEさん。前のときは勝手に家を出て生活保護は廃止になった。「そんなことをしても誰も心配するものはおらんよ」と、投げやり。しかし今回は、やはり厳しい路上生活に耐えられなかったのか、自ら生活保護申請をしたが、家探しの協力を求めてきた。時間はかかったが何とか入居でき、人間らしい生活をとりもどすことができた。仕事が見つかればそれが一番の生きがいなのだが、それとは別に、Eさん自身が、自分を必要と思われる環境をどうにかつくっていきたいと思う。
くつろぎ・入浴サービス 2008-2009年          広島西支部: 米澤恭子
 〔すでに5年経過、229回〕 入浴サービスは、この6月で229回を数えます。
 〔世界的同時不況後は若い利用者の増加〕 2008年の冬以来、新しい利用者が増えており、年齢的には、30〜40代が目立ち、中には、20代の方もいらっしゃいます。
 〔脱路上〕 路上脱却者は、毎年約40名の実利用者のうち約20名、約50%です。2008年度は就職した人はわずかで、ほとんどが生活保護受給です。高齢者、障害者、女性が多く、中には生活に困窮している30〜40代の若い人が、深刻な状況になる前に生保を受けながら就職活動をして生活再建しています。ただ、路上から出ても途中で挫折しそうにな人には、スタッフが根気よく関わってやっと生活が落ち着いた例もあります。アフターケアの必要性を痛感しています。
〔女性のホームレス〕 女性の利用者も3名ありました。一番目の方は、07年11月から4ヶ月入浴を利用され、その後行方が分からなかったが、夜回りに発見され、再び利用されました。偶然福祉関係の資格を持っていたので、職と住居を得て完全に脱路上されました。二番目の方は保護受給になり、三番目の40歳代の方は、1回利用された後、連絡を断たれました。夜回り担当者も心配して探したのですが、分かりませんでした。
 〔利用の長期化、不況〕 常連の長期利用者は、一時減りましたが、若い方も仕事がみつからなくて、最近また長期化するのではと危惧しています。
 〔元路上生活者が支援の主体に〕 明るいものが幾つかあります。そのひとつは、路上から上がった4名の人たちが、アルバイトやボランティアとして長期間支援活動に携わっていることです。よく気がつき、てきぱきと動き、大切なスタッフです。路上生活で苦労した経験から、利用者への気遣いや的確な助言には 我々が及ばないものがあります。得意の料理の腕を発揮して、食事を担当し、今やなくてはならない存在となっています。このボランティア活動を通して、自分達の居場所や生き甲斐を見出しているように思われます。
 〔健康支援の強化〕 もう一つは、看護協会の看護師に加えて、2009年1月から広島大学大学院保健学研究科の森山美知子先生(看護師)がやりくりして学生と共に土曜日に参加してくれています。毎週必ず1名看護師が居る体制ができて、健康支援のレベルが向上しています。先日も森山先生の適切な対処で虫刺されから細菌感染した利用者を医療受診へつなぐことができ、社会福祉士にとっては、心強い限りです.
 〔ボランティアの参加〕 ホームレス支援ボランティア講座を受講した市民、学生、看護師、社会福祉士等様々な方が都合のつく時には来てくださいます。このように、例年になく多くの方が関わってくださるようになり、講座の成果がみえてきた感があります。 
2008年度くつろぎ・入浴サービスの実績
◆県社会福祉士会(責任団体)、県介護福祉士会、県看護協会広島西支部、ボランティアと協働で事業実施。財政は広島県共同募金会助成金、広島市補助金、自己資金、寄付で行っている。
◆広島市西区にて、健康チェック、入浴、休憩、簡単な食事、靴・衣類等必要物品の提供、および生活相談、就労支援など。第1-3金曜日、第4土曜日13:30-18:00。 *数字が上記記事と少し違う。                               
(支援実績) 年度 回数 実利用者 延利用者 路上脱却 死亡 路上
2007  42   34      105    16     1  18
2008  48   45      152    16     0  28
(脱路上の内訳)   就職 就職+貯金 年金 就労+生保 生保 帰郷 小計(率)
2007   7     0     0     0      8   1   16 (47%)
2008   1     0     1     1      13   0  16 (35.5%)
◆脱路上した人: 生きがい及び再び路上に舞い戻らないために、入浴、夜回りの支援ボランティアとして従事している。
呉のホームレス支援の現状について   社会福祉士会中南支部: 垣内 富子・坂田 久典
〔若い路上生活者、疾病・入院〕 呉地域の夜回りも五年目を迎えたが、2008年秋の派遣切り以降若いホームレス者が近隣の市から短期間移動してきています。今年4月から相次いで3名が入院されました。2名は以前から高血圧があり脳出血で倒れ入院、1名は多量のアルコールを飲んでおり食事摂取出来なくなり入院となりました。彼らは劣悪な環境と健康状態が悪くても医療保険がないために救急車で運ばれないかぎり医療機関に受診できません。
Aさんは高血圧と喘息があり、喘息が悪化しB-HPに受診していたが病院の対応に不満を感じ最近は受診していないようです。喘息の薬が必要であるので「調子が悪いようであればすぐに受診するように」と話しをするがAさんの表情は暗くうまく行っていないようです。
〔定額給付金の支給、行政の同行夜回り〕 うれしい出来事もありました。呉市生活福祉課から、総務課職員が定額給付金について夜回りに同行して聞き取りを行い実情にあえばを支給したいという連絡が入ありました。5月に行政とホームレス夜回り支援連絡会を実施した時、この問題を投げかけておりそれに早速対応してくれました。6月23日の夜回りで行政がホームレス者と話しを行い、1人は翌日市役所に給付金を受け取りに行き、2人は他市の住所につき呉市が書類手続きを行っており少し時間がかかるが給付できると、呉市総務課から電話連絡がありました。基本的には住所がないと難しいが、どこかに残っていれば呉市が何とか対応したいので、今後も本会と連携してより多くの路上生活者に給付したいと言われました。当日は雨模様の中、4名の行政職員が同行され熱心に聞き取りを行っている姿をみて感謝するとともに、私たちが今まで細々と行ってきた夜回り支援活動も少しは実を結んだのではないかと嬉しく思いました。
福山の状況                    社会福祉士会東支部: 鳥海洋二
〔現在20名で減少。派遣切りで失業している若い人が路上に出てきている〕 福山市内のホームレス者は約20人。人数的には、ここ3年間は大きな変動はありません。しかし、4月以降、(同じ人が続けてくるというケースは少ないのですが)若い人が炊き出しに来られることが多くなりました。「年末まで派遣社員として働いていましたが、解雇になって、住むところを失い、友達の所に転がり込んでいたけれど、居づらくなって…」「派遣先を解雇になって、実家に戻ってはきたけれど、年金収入しかない両親の元で、無収入の私がいては…」炊き出しではこうしたやりとりがボランティアとの間に交わされました。
〔相談会&交流会〕  そうした中、4月28日には恒例の「ホームレスの人たちとボランティアの相談会&交流会」が福山市市民参画センターで開催しました。今回もホームレス状態にある人が18人参加、ボランティアや福山市ケースワーカー、保健師さんたちと交流をあたためました。内、障害のある2人が福山市のケースワーカーの生活相談を受け、アパートを確保、生活保護の受給が認められ、“畳に上がって”いきました。3日後には、アパートの契約やストックしている家具などをその人のアパートへ搬送などを会員2人で行いました。
〔市民の関心が高く寄付をいただいた〕  とりとめもなく書いて恐縮ですが、「定額給付金をホームレスの人たちの支援に寄付していただけませんか?」と連携するボランティア団体と福山駅前で街頭啓発を行った所、いくつかのマスコミに取り上げられ、全国から約10万円の寄付が集まりました。少しずつですが日本にも寄付の文化というものが根付つつあると実感しました。
5月27日(水)。広島駅地下で「反貧困-まちかど生活相談会」(反貧困ネット主催)が実施され、生活保護・医療福祉・借金・労働・住まい・定額給付金等の相談が行われました。
ボランティア活動のご紹介・問合せ先 
広島県社会福祉士会、広島市南区比治山本町12-2、TEL:082(254)3019 
A夜回り活動
<広島市>(集合)4月から11月の第2・4水曜日、20時30分~、(集合場所)カトリック観音町教会
<呉市>(集合)毎月第4火曜日、18時00分~(集合場所)「呉市社会福祉協議会1F駐車場」
<福山市>(集合日時)毎週日曜日、17時30分~、(集合場所)「カトリック福山教会」
Bくつろぎ入浴サービス
<広島市>(日程)第1・2金曜日、第3・4土曜日 12:30~18:00、(場所)西区(JR駅近くのビル)
自宅でできる寄付ボランティア  *お米が不足しています。
■タオル、衣類(夏用、長袖・半袖シャツ、Tシャツ、洗濯済みのズボン)、新品下着(トランクス型)、靴下、ベルト、運動靴、スポーツバッグ、中古自転車   ■食料: お米、缶詰、即席カップ麺、レトルト食品、日持ちする野菜(かぼちゃ、ジャガイモ、たまねぎ、だいこん、にんじん)、季節の野菜など(きゅうり、茄子のお漬物を作ります)。  ◆(寄付感謝)①お米(広島市中区垣尾泰弘様、中区柿生康弘様、安佐北区、南区、江田島市の方々、②タオル(西支部会員)、③匿名企業(ビスケット1斗缶2つ、ミネラルウォーター6箱)、④三上監事(寄付金10万円)、
※この他の物品の寄付については、事務局にご相談いただけると幸いです。

by books131 | 2009-07-11 21:29 | イベント転載