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越後屋にきぬさく音や衣更   其角

芭蕉の弟子であった 其角の夏の一句

都会的な伊達男 人気宗匠として 華やかな日々を暮らした

生涯 芭蕉を師とあおぎ 芭蕉も彼をかわいがったという
芭蕉の最後を看取ったのも この其角である

この句の 越後屋は 三越百貨店の前身のこと
当時の常識を破り 現金掛値なし 反物の切り売りで都の人気をさらった
店頭におしかけた客の注文に応じ 手代たちが つぎつぎに
絹を引き裂いていく 初夏の衣更の季節
まだ ひんやりとした空気のなかに 響く音
都会らしい 洗練の句だ

けれどこれは 表の読み方

裏は 「きぬさく」 古歌でいう「きぬぎぬの別れ」をさす

其角の遊郭通いはあまりにも有名
朝帰りし 通りかかった越後屋の前で
「きぬさく」音を聞き 酒とも女とも別れて こんな生活を衣更したいと
思ったのだろう とも解釈できる
いや 慣れたあまい生活を清算できるほど わたしたちは
賢くはなく 本当に いやおうなく その生活をなくさないかぎり
新しい生活はこない 

きぬさく音は そのとき どれほど 鮮烈なことだろう

その日は 必ずやってくることを  其角は知っていたのだろうと
わたしは思う
師の死を看取り 師より若い47歳で没する 

by books131 | 2004-05-27 17:22