中上健次の「鳳仙花」地下鉄のとどろく音に

a0015380_144638.jpgミュージシャンの勝野タカシさんに
おめにかかったのは
まだ二回ほど

京都と大阪
どちらもライブ会場での できごと

立ち振る舞いのやわらかな人で
とても誠実な感じがつたわってくる

出番まで 事務所の机の前に座って
しずかに文庫本を読んでいはる

本 好きなんですね

なんのはなしからは忘れたが
「百年の孤独」が好きなんですよ
というと

にっこりうれしそうに 
僕もなんですよ
ブエンディア一族の歌をつくって歌ったこともある

一族の歌は 茶色い大地がなだらかに盛り上がり
見渡す限りにひろがる 赤茶けた大地と家々がつらなっていたのだろうか
名前の連呼に ふと 自分が呼ばれたような気がした

それから一週間ほどして
勝野さんから包みが届いた

「鳳仙花」中上健次

本屋でみつけたから と
短い手紙もそえられている

吉野生まれのわたしに
熊野の物語を届けてくれたのだ

それから 地下鉄に乗るときは いつも
この本を開いている

わたしの日常では あまり読書の時間をとらない 
地下鉄の電車待ちと電車のなか15分ほどの時間が 
ひとりの読書の時間

ときどき 動物園前をすぎて
大黒町までいってしまう

パチとはぜる鳳仙花の 季節への区切りのつけかたが
主人公フサを思わせる

ページを繰り 
12歳のフサが大人の女になっていく

中上健次は フサを愛していたのかと
思われるほどに
フサの白い肌とてのひらに包まれる乳房は なまめかしく
冬の和歌山のつめたさに
つめたければつめたいほど 正気をもどさせるかのように
彼女はつめたい水を飲み つめたい床を触る

はさんだ栞のわたしは あいかわらず
フサのようなたくましさをもてず
なんとか 勇気をふりしぼろうと必死なまま

戦争の前後を生きた女が
今日の飯を得るために
なにを思いなにを考えたのか
フサが幼いころ みた
水仙の一面に咲く古座の海岸を
彼女が 愛しきれないほど愛したその地を
地下の暗い線路のうえで
いっしんに おもいだそうとする
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# by books131 | 2004-04-22 14:47

生きる現代文学がやりたいんよ

a0015380_134156.jpg死んでしもた者が負けや 
 と男が言った

生き残った者も 
いつかは死ぬけどな

文学は「本」という一冊に
なることで
人の人生を何度も生きる




一冊であるためには
何百冊 何千冊となければならない「本」は
まるで人間のようやけどな

文学が 本という一冊になることを 自明のこととして
では 今は生き残っているわたしは
何かできるのやろうか
何か 可能性をさぐることはできるんやろうか

本を出版すること以外で さがしてみた

声にすること

books ahchivesは そして はじまった

声が明日のページをめくっていく
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# by books131 | 2004-04-21 13:17